実用普及品から高級ブランドバッグまで、様々な種類が存在し今や必需品と言えるバッグアイテムですが、長く良好なコンディションで使い続けるためには、普段からのお手入れが大切です。
ですが、日常使用する上で使用頻度の高い箇所は定期的に修理・部品交換が必要となり、所有者本人では手に負えないので、製造メーカーか皮革製品修理専門店に預けて依頼する事になります。
特に多発するトラブルは中身を出し入れする際に開閉するファスナー部品で、原因には様々なケースがあります。
鞄のファスナーはいくつもの部品が組み合わされ、スムーズな動きや耐久性を保つための工夫が随所に施されており、高い使用頻度に耐えられるよう製造されているのが特徴です。
しかし、何年も使用を続けていると、当然ですが部品にも経年劣化が生じ、他の箇所に比べて使用頻度が非常に高い事もあり、破れ・破損・故障などが発生します。
簡単な初期症状のトラブルであれば、自己責任で直すことができる場合もありますが、経年劣化や部品の素材破損・損傷など重度の場合は、専門技術を用いなくては直すことができません。
通常、鞄のファスナー修理は所有している鞄の製造メーカーでメンテナンスを受け付けており、販売店舗を経由して修理担当部署に作業を依頼する形になります。
また、料金や納期などもろもろの事情から製造メーカー以外を利用するユーザーもおり、優秀な実績や技術を持つ皮革製品修理専門店に依頼するケースも多く、おすすめの方法です。
ここでは、鞄のファスナー修理について、製造メーカーや皮革製品修理専門店など、依頼先による作業内容・対応の違い、料金の目安などについて紹介して行きます。
現在、所有している鞄のファスナー修理でお悩みの方は、是非この機会に目を通して参考にしてください。
鞄のファスナーはどのような部品で構成されているか
製造メーカー・鞄のタイプによっても差がありますが、ファスナーは複数の部品を組み合わせることでできあがっています。
ファスナーに使用されている部品にはどのような種類があるのか、見ていきましょう。
- スライダー
ファスナーを開け閉めする際、スライドし稼働する部分を「スライダー」といいます。
スライダーは引手・柱・胴体によって構成されており、ファスナーを開け閉めするため指で持つ部分を引手と呼び、引手を繋ぎファスナーを引く方向に角度が変えられるようにする空洞を設けた部品を柱といいます。
さらにスライダーの一番下に当たる部品を胴体と呼び、ファスナー左右のギザギザをかみ合わせて閉じたりかみ合わせを解除する事が役割です。
鞄の引手は、長さや形状に特徴があり、製造メーカーによってさまざまなデザインが存在します。
- エレメント
エレメントは別名「務歯(むし)」とも呼ばれ、ファスナーのギザギザの歯が細かく並んだ金属やプラスチックの部分を指します。
スライダーが動くことでエレメントは開閉し、左右のギザギザをかみ合わせます。
エレメントの上部は「上止(うわどめ)」、エレメントの下には「下止(したどめ)」が取り付けられており、スライダーが抜け落ちるのを防ぐ構造です。
エレメントの歯は小さい物から大きくしっかりした造りのものまで、鞄のサイズやデザインによって異なります。
エレメント・スライダーには、メーカーによって多種多様な素材が使われていますが、金属製が加わる力にも強く、壊れにくくなっています。
- テープ
テープとは、エレメントと一緒になっているファスナーの生地の部分を指します。
ファスナーは、テープとかばんの生地を縫い合わせ取り付けられており、テープの素材は、ポリエステルなどの合繊がほとんどになっています。
鞄のファスナーが壊れる主な原因とは
では、鞄のファスナーはどのような要因で壊れてしまうのか、主な原因について見てみることにしましょう。
①スライダーが生地に挟まる
これは「生地を噛む」といいますが、ファスナーを開閉する際に途中でスライダーが周囲の生地を巻き込んでしまう症状です。
特に長いファスナーを持つ鞄やファスナー周辺の生地が薄い・ファスナーに被せる部分の生地が深い場合良く起こります。
鞄の場合、最悪内袋の生地も挟んでしまうケースがあります。
生地を噛んでスライダーが動かなくなった場合は、スライダー本体が壊れた症状ではないので、軽症の場合、噛んでいる部分の生地が外れるように、真横にそっと引っ張る・外れないときは噛んだときと逆の方向にスライダーをゆっくり動かしながら、噛んだ生地をやさしく引っ張ると解決する場合が多いです。
しかし、スライダーの生地への噛み方が深い・内袋の生地が完全に噛んでしまった場合などは、専門の修理店か製造メーカーに預けるのが無難です。
②スライダーの動きが悪い
生地がスライダーに噛んでいないが、スライダーの動きが悪い・動かないといった症状も良く見受けられます。
これは、長年の使用によりスライダーの滑りが悪くなり、エレメントとのかみ合わせがスムーズにならない事で起こります。
まず、対策としては、エレメントやエレメントの上止部分に、ロウや潤滑剤を塗るなどして滑りを良くする事で解決する事が可能です。
ですが、このような処置を施してファスナーの動き・止まりが改善できない場合は、エレメントかスライダーが破損しているケースもあるので、専門修理店に依頼するのが得策です。
③スライダーが壊れた
スライダーの引手などが破損して取れた・スライダー事態が壊れている場合は、かなり重症の部類に入るトラブルとなります。
引手のみの交換は困難なため、多くの場合スライダー自体を交換する事になります。
これは製造メーカー・皮革製品修理専門店でないと作業ができないので、速やかに依頼しましょう。
④ファスナーが閉まらない
鞄やバッグのファスナーの引手を持って引いてもファスナーが閉まらない場合は、スライダーが摩耗している可能性が高いです。
エレメントを閉じて噛ませるためのスライダー後部が摩耗し、ファスナーが閉められなくなります。
スライダーが金属製の場合、スライダー後部の上下をペンチで軽く押さえるなどで稼働する場合がありますが、あくまで一時しのぎなので、早めに修理専門店に依頼する事が無難です。
⑤エレメントが破損
エレメントの部品は、精密にできており、歯が少し変形しただけでも噛み合わせがうまくいかなくなります。
さらにエレメントの歯が欠けてしまうと、エレメントそのものを交換しなくてはならなくなります。
この場合は速やかに修理専門店に依頼しましょう。
⑥テープのほつれ・テープが壊れる
テープがほつれたり、かばんから取れかかったり、完全に取れてしまう例もあります。
テープが取れてしまった場合はファスナーごと交換する必要があります。
速やかに修理専門店に依頼しましょう。
記事参照:ルイヴィトン公式サイト・お手入れ/リペア
製造メーカー・皮革製品修理専門店のファスナー修理料金・目安とは
ファスナーは鞄・バッグにとって最も重要な部品なので、トラブルが発生した場合は製造メーカーか皮革製品修理専門店に依頼するのが最も安心できます。
しかし、製造メーカー・皮革製品修理専門店はメーカー・店舗により修理料金が異なり、依頼先を選択するのが難しいです。
ここからは鞄・バッグのファスナー修理料金の違いを代表的なブランドを例に、製造メーカー・皮革製品修理専門店で比較してみる事にしましょう。
- ルイヴィトンの場合
ルイヴィトンファスナー修理皮革製品修理専門店料金 | メーカー依頼 |
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12,000円~20,000円(概算) | 30,800円~35,000円(概算) |
- シャネルの場合
シャネルファスナー修理皮革製品修理専門店料金 | メーカー依頼 |
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13,200円~(概算) | 23,760円(概算) |
- プラダの場合
プラダファスナー修理皮革製品修理専門店料金 | メーカー依頼 |
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12,000円~(概算) | 35,000円(概算) |
- 他ブランド・一般既製品の場合
ファスナー修理皮革製品修理専門店料金 | メーカー依頼 |
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7,000円~(概算)(目安料金・ブランドにより異なる) | 製品預かり後見積り(対応は製造メーカーにより異なる) |
このような料金設定になっており、製造メーカーと比較すると皮革製品修理専門店の料金はかなりお得な設定になっています。
納期についても、海外高級ブランドや製造メーカーの場合、約1ヶ月以上を目安にしている所が多いですが、皮革製品修理専門店の場合約2~3週間と、早い所が多いです。
また、皮革製品修理専門店の場合、修理店によって技術力が異なりますので、以来の際はしっかりした設備・優秀な技術士・口コミ・評判の良い修理専門店を選択する事が重要です。
まとめ
鞄のファスナーは最も使用頻度が高く、高い耐久性を保つため、精密な部品で製造されています。
そのため鞄のパーツ類で一番傷み・破損などが起きやすく、トラブルになるケースが多いです。
軽症の場合、自分で直せる場合もありますが、重度の故障・傷みによるトラブルの場合は製造メーカーや皮革製品修理専門店に依頼するケースがあります。
通常、海外高級ブランド等の鞄は製造メーカーのカスタマーサービスにブティックを窓口にして依頼するのが普通ですが、料金や納期などもろもろの事情で優秀な皮革製品修理専門店に依頼する人も多く、おすすめの方法です。
しかし、皮革製品修理専門店の場合、在籍する職人や設備などのレベルに差があり、仕上がりに差がありますので、店舗を選択する際には技術が高く評判の良い修理専門店を選ぶのが理想です。
依頼の際は良質な皮革製品修理専門店を検討し依頼するよう十分注意し、愛用の鞄を良好なコンディションで使えるようにしましょう。