腕時計の中にはカレンダー機能が搭載されているモデルがあります。日付表示だけのシンプルなものから日付、曜日が入っているもの、いくつもの機能が搭載されている高機能なモデルまで多数存在しています。
パッと時計を見れば日付や曜日が確認できるので、便利だと思っている方も多いのではないでしょうか。
ところが、このカレンダー機能の日付や曜日が変わらなくなってしまうことがあります。半目表示になったり何をしても全く変わらなくなってしまうケースもあるのですが、不具合の事例としては珍しいことではありません。
そもそも時計のカレンダー機能は複雑でいくつもの部品が連動して動くことによって正常に稼働します。機能によっては超精密に作られていますので、どこかの部品一つでも異常があるとカレンダーは動かなくなってしまうのです。
では異常が発生する原因を内部的要因、外部的要因含めていくつかご紹介していきます。
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歯車や部品が破損している場合
カレンダー機能には日送り車、早送り車、カレンダージャンパーと呼ばれるパーツが使われています。日送り車は時計の針を動かす歯車と連動して動き、カレンダーディスクを送る役割を持つ歯車です。
早送り車はリューズ部分と噛み合い、段引き操作を行ってカレンダーディスクのみを送る役割がある歯車になり、カレンダージャンパーはカレンダーディスクを正しい位置で送るためのバネになります。
上記の図はトリプルカレンダーと言われる機能(日付、曜日、月表示)が入っているムーブメントの画像になります。カレンダー部分だけ見ても複数の部品が連動して動くということが分かるかと思います。
これらのパーツが連動し、正常に動作することでカレンダーが1日ずつ変わっていくのですが、カレンダーが半目のままになる不具合や全く動かないといった不具合がある場合はパーツが破損している可能性が考えられます。
何度もカレンダー操作を繰り返したり、強い衝撃を与えてしまった場合などが破損する原因になります。
禁止時間帯にカレンダー操作をしてしまった場合
腕時計には一部の特殊なモデルを除き、カレンダー操作を禁止する時間帯が決められています。禁止時間帯に手動でカレンダーの早送り操作をしてしまい、部品を破損させてしまうケースもあります。実際に修理に持ち込まれる案件で一番多いのがこの不具合です。
一般的なモデルは日付が変わる前後4時間、つまり午後8時~午前4時の間は手動でのカレンダー操作を禁止しています。この前後4時間は、先ほども説明した「日送り車」がカレンダーディスクに接近して0時付近で日付を変更しようと徐々に連動している時間帯であるので、リューズを引いて無理矢理カレンダーの早送り操作をすると日送り車やカレンダーディスクを含めた周辺のパーツに負荷がかかり、部品の変形や破損に繋がってしまうのです。
つまり、時計自身が日付を変更している最中に、人間の手で強制的にカレンダーを回す事になるのでパーツに負荷が掛かってしまうという事です。
カレンダーが動かなくなってしまった場合はオーバーホールが必要になることに加えて破損したパーツも交換になってしまいますので禁止時間帯でのカレンダー操作は絶対に避けるようにしましょう。
※禁止時間帯のない時計
一部ですが、禁止時間帯がないモデルもあります。
・ROLEX Cal.3235、Cal.3255、Cal.2236搭載モデル
これらのキャリバーはROLEXの新型キャリバーになり、日付変更の禁止時間帯はなく、いつでも変更してOKです。デイトジャストシリーズやデイデイト、ヨットマスターやシードゥエラーなどにも搭載されています。
・ブライトリング Cal.B01搭載モデル
ブライトリングが開発した自社キャリバーB01も日付変更の禁止時間帯がありません。クロノマットやナビタイマーを中心にいろいろなシリーズに搭載されています。
・短針駆動タイプ
これは少し特殊なパターンですが、リューズを1段引き、短針だけを駆動させて日付を変更するモデルも禁止時間帯がありません。モデルで言えばROLEXのエクスプローラーⅡやGMTマスターⅡ、OMEGAのシーマスターGMTなどが代表的です。
部品の油劣化
カレンダー周辺部の歯車や部品にも油は注してあり、それぞれのパーツがスムーズに動くためにはしっかりと油が注してあることが必要不可欠なのですが、長年使用することで油の量も減っていき、汚れていってしまいます。油切れや汚れた油の状態のまま使用していると部品の動きは当然悪くなってしまうので、上記の図のようにカレンダーが半目になったり変わらなかったりといった不具合が発生します。
また、不具合が出ていないからと言って油切れの状態のまま使用することもお勧めできません。症状が出ていないだけで内部の歯車や部品には間違いなく負荷がかかっています。動きが悪くなるだけならまだ良いのですが、最悪の場合、部品が破損してしまうこともあります。
不具合を未然に防止するという意味でも3~4年ごとを目安に定期的にメンテナンスに出すようにしましょう。
リューズ部分による不具合の場合
今までの事例は全て内部的要因による不具合でしたが、外的要因によるカレンダーの不具合も起こる可能性があります。リューズ本体の劣化や摩耗がその一つになります。
画像のようにリューズ部分は本体と巻き芯と呼ばれる部品に分かれており、通常は接続部分がしっかりと接着されている状態なのですが、汚れやホコリ、経年劣化等によりその接着が緩んできて外れてしまうことがあります。
リューズはゼンマイの巻き上げ、カレンダー操作、針回しの作業を行う上では非常に重要なパーツですが、接着が緩んでしまうと他の部品との連動も一切行えなくなってしまうのです。カレンダーの早送りはそこまで大きな力を必要としないのですが、緩んだ状態ですとその操作もできなくなってしまいます。
この場合は再度接着をし直せば改善はするのですが、残っている接着剤や他の箇所の油劣化している可能性も高いのでオーバーホールが必要な場合がほとんどです。
また、リューズ本体も経年劣化や摩耗により破損してしまうこともあります。金属自体が擦り減ってしまい、隙間ができることによってリューズが空回りしてしまい、巻き上げやカレンダー操作ができなくなってしまうのです。
リューズが破損している場合は当然リューズ交換が必要になります。リューズ交換だけで済む場合もありますが、内部の状態が悪くなっている場合も多いので、オーバーホールも行わなければならない可能性も残ります。
どちらのケースも長年オーバーホールをしないまま使用したことにより起こる症状でもあります。場合によってはリューズだけでなく、内部の歯車にまで悪影響を与えてしまう可能性もありますので要注意です。
まとめ
以上、カレンダーの不具合を引き起こす原因の紹介でした。
紹介した事例以外にもカレンダーの調子が悪くなる要因はあります。
しかし、ほとんどのケースに言えるのが長年メンテナンスに出さずに使用していて起こる不具合だということです。
定期的にメンテナンスに出し、カレンダー送りの禁止時間帯の把握までしておけば、今回紹介した不具合は全て未然に防ぐことが可能です。
カレンダーの不具合は時刻と関係ないし、動いているから大丈夫だろうと判断して使用するのは非常に危険です。上記で説明した通り、カレンダーと時刻を連動させるためにいくつもの歯車が嚙み合っていますので、それらの部品まで壊れてしまう可能性があるからです。
不具合が出たり異常を少しでも感じたらまずは修理店に相談するようにしましょう。診断と見積りで費用がかかることはまずありません。時計の状態を把握するだけでも意識が違ってくると思います。
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