二世紀以上に渡る腕時計の歴史において、最初の動力源は手動で金属板製のゼンマイを巻き上げ、ゼンマイが緩む力を利用して針を動かす機械式メカニズムによって成り立っていました。
そして二十世紀中盤に腕時計の歴史上革命ともいえる、電池を動力として水晶を振動させる事で針を動かす「クォーツ式」が発明され、以降腕時計のメカニズムはクォーツ式が主流となっていきます。
しかし、西暦2000年代に入り、趣味や嗜好品としての機械式腕時計が再び脚光を集めブームとなり、現在は実用本位のクォーツ式とは別のジャンルとして、機械式腕時計は人気を二分しているのです。
機械式腕時計には構造の違いで2種類のムーブメントがあり、一つは腕時計黎明期に発明された手巻き式ムーブメント、もう一つは「ローター」と呼ばれる薄い板型振り子を腕の振動で動かし、ゼンマイを巻き上げる自動巻きムーブメントがあります。
どちらも駆動力となる心臓部品は金属製のゼンマイであり、ゼンマイは香箱と呼ばれる箱に収納察れており、リューズやローターから伝わる巻き上げの力によって緩んだ状態から限界まで巻き上げられた状態になります。
このゼンマイが緩むことによって時計の針が駆動し、時刻を刻んでいくのです。
腕時計のゼンマイは耐久性が高く、長期間の使用に耐えうる性能を持ちますが、状態を維持するため潤滑油が必ず注入されていて、潤滑油が切れると金属疲労しやすくなりゼンマイの寿命が早まります。
潤滑油が枯渇するまでの年数は約5年といわれており、切れてしまう前に補充を行う必要があります。
また同じく約5年程でゼンマイもたいていの場合寿命を迎える場合が多いので、潤滑油補充の際はメカニズムのオーバーホール(分解掃除)とゼンマイ交換が施されるのが通常です。
この作業を怠ると動力の心臓部であるゼンマイが傷み・破損を起こす可能性が高く、最悪の場合ゼンマイが切れてしまう事もあります。
ゼンマイが切れると腕時計は全く動かなくなり、巻き上げ作業を行っても空回りし巻き上げ不可の状態に陥ります。
こうなると症状は致命的で、最悪の場合ムーブメントそのものを交換する事になりムーブメント・及び交換部品が存在する場合はまだ救われる可能性がありますが、高級品のアンティーク品などはムーブメント・部品が無い事がほとんどで、時計としての価値を失ってしまうのです。
ここでは、大切な価値のある機械式腕時計を良好な状態に保てるよう、心臓部であるゼンマイが切れてしまう理由・ゼンマイが切れたかどうかの確認方法・ゼンマイが切れた時計の修理料金について紹介して行きます。
現在、機械式腕時計を愛用している方、またゼンマイのトラブルでお困りの方は、是非この機会に目を通して見てください。
Contents
機械式腕時計のゼンマイが切れてしまう理由とは
機械式腕時計に搭載されているゼンマイには個体により差はありますが、切れてしまうことがあります。
平均してゼンマイの耐久年数は約5年といわれることが多いですが、使用法によっては5年以内で切れてしまう・また、20年以上使用しても現役で作動している個体もあり、判断の難しいところです。
一番大きな理由としては使用法が丁寧かどうか、また定期的メンテナンスをまめに施しているかどうかで変わってきます。
まず、ゼンマイはその役割上ヘタりにくい耐久性を持っていますが、耐久性を保つためにゼンマイ本体に製造時、熱処理を行います。
ですが均等に熱処理がされていない個体がごくまれに存在し、この部分が熱ムラと呼ばれ大きなトラブルの元凶です。
特にアンティーク品など初期の古い腕時計に使用されているゼンマイは、熱ムラ有りと無しで個体差が大きく、熱ムラのあるゼンマイは耐久性が弱くなるため、その部分から切れる可能性が高くなります。
そしてゼンマイは耐久性が高いですが、金属疲労は避けることができず、劣化を起こすと切れてしまう原因となります。
その為製造から年数が経過している旧式腕時計や、アンティーク品などは金属疲労の限界を迎えゼンマイが切れてしまう事があり、要注意です。
また、使用法の違いによってもゼンマイの寿命は大きく異なり、トラブルの発生率が変わってきます。
特に手巻き式腕時計に多いのが、リューズでゼンマイを巻き上げる際、ゼンマイが巻き切ると最大に引っ張られた状態になります。
常にゼンマイを巻き切った状態で使用を続けると、最大限に巻き切られた部分の金属疲労が早まり、突然負荷を超えて切れてしまうことがあります。
リューズを巻き上げの際に巻き上げ重くなり、ピーンと張った状態になるとゼンマイの巻き上がりが限界に達するので、直ちに巻き上げをやめるのが注意点です。
機械式腕時計のゼンマイが切れているかどうか確かめるには
では、機械式腕時計のゼンマイが切れたかどうかについては、どうやって判断したらよいのでしょうか。
ゼンマイが切れた場合に起こる症状としては
- リューズが通常巻き上げを行っている状態とは違い明らかに軽く感じる
- リューズをいくら巻き上げても巻き止まりが無い
- リューズを巻いていたら「パチン」と弾けたような音が聞こえた
- 巻き上げの際時計を本体ごと振ると秒針が少し逆に回転する
などが挙げられます。
この他にはゼンマイの寿命を安定させる潤滑油が切れてしまったまま使用を続ける、定期的なメンテナンスを全く行っていない、等が考えられます。
そして意外と多いのが潤滑油の補充がされていない・定期的なメンテナンスを怠っている例です。
これには機械式に比べメンテナンスの頻度が非常に少ない、クォーツ式の普及も原因と考えられますが、複雑な機械部品が何百と使用されて構成されている機械式腕時計は、定期的メンテナンスを行わないことは、致命的な原因となります。
腕時計に使用されているゼンマイの場合、金属疲労や摩耗・異常な負荷による原因でゼンマイが切れるのは予測できず、突然にやってきます。
ですので、上記に挙げたような症状や、メンテナンスの不足に気付いた場合は速やかに製造メーカーや腕時計修理専門店に相談する事が賢明です。
記事内容参照:セイコー公式サイト・修理について
機械式腕時計に搭載されているゼンマイが切れた場合のメンテナンス・修理料金について
万が一、機械式腕時計のムーブメントに搭載されているゼンマイが切れた場合、対応としては「ゼンマイが切れた腕時計の製造メーカーによるメンテナンスサービス」に相談するか、「優秀な技術を持ち実績の高い腕時計修理専門店」に相談する方法があります。
まず、製造メーカーへの相談ですが、ほぼすべてのメーカーがカスタマーサービスあるいはクライアントサービス、そして全国の直営販売店で受付を行っています。
メーカー扱いは、ゼンマイ切れの場合オーバーホールとゼンマイ交換を合わせて行い、料金・納期については時計本体を預かり後見積り金額決定後連絡です。
よって事前に確認ができないケースがほとんどで、特に海外高級ブランドの腕とけいについてはかなりの高額になる事が多いので、以来の際は料金・納期に十分な余裕を持つことが重要です。
一方、腕時計修理専門店の場合は、メーカー対応と違い、基本料金の案内をしている修理店が多く、メーカーに比べて気軽に相談できるようになっています。
しかし、修理専門店によって在籍する修理技能士のスキルや経験に差があり、高い実績と信頼できる技術・施設を持った修理専門店を選択しないと、仕上がりが大幅に異なる可能性が高く、十分に検討する事が望ましいです。
参考までに腕時計修理専門店のゼンマイ切れ修理に関する、概算の基本料金相場を見てみる事にしましょう。
腕時計修理専門店ゼンマイ切れ修理内容 | 修理料金(概算) |
---|---|
ゼンマイ交換 | 5,500円~(概算)メーカーにより変動有り |
ゼンマイ交換に伴うオーバーホール他 | 18,000円~(概算)オーバーホールのみ・部品交換が生じた場合部品代は別途 |
これはあくまで概算の一例で、国内メーカーであるか・スイス/ドイツ製等海外製ムーブメントかによって料金には変動があります。
一般的に大量生産による普及品の場合、安価になる場合が多いですが、その他国内メーカーの職人による手作業の高級ムーブメントや、ロレックス・オメガ・ランゲ&ゾーネなど、自社製複雑構造ムーブメントを採用している海外ブランドは高額になる事があるので、以来の際は確認する事が重要です。
納期については多くの修理専門店が約1ヶ月程を見ており、内容によっては時間がかかる場合もありますので、要相談となります。
また腕時計修理専門店は修理店によって在籍技術士のレベルが異なるため、優秀な評判と技術を持つ修理専門店を見極める必要がありますので、慎重な検討が必須です。
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機械式腕時計のゼンマイ切れを修理したい場合メーカーか腕時計修理専門店に依頼するかをメリット・デメリットを押さえて検討する事が必要
近年、再びブームとなっている機械式腕時計を、良好なコンディションで使い続けるためには、定期的なメンテナンスを心掛けることが重要です。
特に、動力の心臓部となるゼンマイ部品には他の部品に比べ大きな負荷がかかり、ゼンマイは高い耐久性を持ち合わせていますが、経年劣化や負荷の度合いによってトラブルが起こると致命的なダメージを腕時計に与えます。
万が一ゼンマイが切れてしまうと、動力そのものが利かなくなり腕時計は全く動かなくなり、時計としての能力を失ってしまいます。
こういった事態に陥らないよう、普段からゼンマイに対する潤滑油の補充・巻き上げ時の取り扱いを慎重に行い、定期的にメンテナンスをメーカー・または腕時計修理専門店に依頼する事が必須です。
さらに、ゼンマイを巻き上げる際、異常を感じたら速やかに使用を控え、専門の技術者に相談するのが得策と言えます。
通常は製造メーカーにお願いするのが普通ですが、製造から年数の経っているモデルやアンティーク品などは、メーカーでも部品を保有していない場合がほとんどで、料金も高額になる可能性が高いです。
そんな時は優秀で高い実績を持つ腕時計修理専門店に依頼すると、料金もお得でメーカー依頼と同質のクォリティで仕上がります。
ですが、腕時計修理専門店は修理店の数も多く、お店によって技術力に差があるため、充分に下調べをして基本知識を身に着けた上で、良質な修理店を選択する事が望ましいです。
是非、匠の技術を持つ優秀な修理技能士が在籍する、良質な腕時計修理専門店を選択して、愛用の機械式腕時計をゼンマイ切れから復活させ、良好なコンディションで使えるようにしましょう。