手巻きや自動巻きの機械式時計がすぐ止まってしまうという相談は多くあります。
腕に着けていてもすぐに止まってしまう、翌朝には必ず止まっているなどの症状が多いですが、原因となる不具合の元は必ずあります。
ではどんな原因があるのか?どういった使い方が良いのか?を詳しく説明していきます。
Contents
ゼンマイの巻き上げ不足による止まり
時計がすぐ止まってしまう原因として最も多いのがゼンマイの巻き上げ不足による事例になります。
機械式時計はゼンマイを動力源とした時計のことで、ゼンマイを巻き上げることで動作します。
しっかりと巻き上げを行っていない状態で使ってしまうと動力源が足りていないということになりますから当然すぐに止まってしまいます。
自動巻きの場合
自動巻きの時計は腕に着けていればずっと動き続けるものだと思っている方が多いのですが、自動巻きの時計は内部の「ローター」と呼ばれる円錐型のパーツが腕の動きと連動して回転し、ゼンマイを巻き上げる仕組みになっています。
従って腕から外すことが多かったり、腕の動きが少ないとゼンマイを巻くローターが回転せず、精度が乱れたり、止まってしまうことがあります。
十分な動力を得るには1日最低でも8時間以上は着用することをお勧めします。
また、腕から外すことが多い方やデスクワークなどで腕の動きが極端に少ない方は巻き不足になっている可能性がありますので、着用前に手動でゼンマイを30~40回ほどゆっくり巻き上げてから使用するとより確実かと思います。
もし手巻きをするのが手間な場合や複数本自動巻きの時計をお持ちの場合はワインディングマシーンという巻き上げを行ってくれる機械を使うのも一つの方法です。
ゼンマイがしっかり巻き上がった状態であれば一般的な時計で40~50時間程度は持続時間(パワーリザーブ)が確保できます。ただし、これは時計に一切の負荷を与えずに測定した最長の時間になり、永続的に持続時間があることを保証するものではないので、実際の使用環境ではもう少し短くなると想定しておいた方が良いでしょう。
手巻き式の場合
手巻き式はその名前の通り、手動のみでゼンマイを巻き上げる方式の時計です。
自動巻きと違い、巻いた分だけしか動力が確保されませんので、着用前に毎日ゼンマイを巻く必要がありますが、よくあるケースが最大までゼンマイを巻かないことによる持続時間の低下です。
手巻き式には「巻き止まり」というこれ以上ゼンマイが巻けないようにストッパーの機能が付いています。使用する際に最大まで巻かないと精度や持続時間に乱れが生じることがあるのですが、一定回数巻いただけで腕に着用してしまうため途中で動力源が無くなってしまい、止まってしまうのです。
手巻き式の場合は着用前に必ず最大までゼンマイを巻いたのを確認してから使用するようにしましょう。
内部の油劣化・不具合での止まり
ゼンマイをしっかりと巻き上げた状態ですぐに止まってしまう場合や持続時間が短い場合は内部の異常の可能性が高いです。
具体的に多い症例としては潤滑油の劣化によるローター本体の巻き上げ効率の低下やゼンマイ切れ、切替車と呼ばれるパーツの摩耗・破損などが挙げられます。
ゼンマイ切れ
良く起こる事例の一つですが、これは動力源の破損ということになりますので基本的には止まりの症状が出ます。
手動でゼンマイを巻き上げる時に手ごたえがほとんど無く、軽い感触が続くような場合はゼンマイ切れの可能性が高いです。
特に手巻き式の時計の場合はより感触がスカスカの状態になりますのでゼンマイ切れかどうかは比較的分かりやすいかと思います。
ゼンマイの切れ方によっては数時間程度動くこともあるのですが、ほとんどの場合は上記の図のように根元部分から切れてしまいます。どちらにしても動力源が破損しているということに変わりはないのでオーバーホールが必須の状態になります。
そのままにしていても時計としての使用も難しいので早めに修理店に相談しましょう。
ローター本体の巻き上げ効率の低下
前述した通り、ローターは腕の動きと連動して回転することでゼンマイを巻き上げるパーツになります。
中央部にベアリングが入っており、回転の効率性を高めている構造になっているのですが、油の劣化が進んでしまうとこの回転効率が徐々に落ちてきてしまいます。当然、上手く回転しなければゼンマイは巻き上がらないので着用していても止まってしまうことがあります。
自動巻きの時計においては必須と言える重要なパーツですので異常を感じたらすぐに修理店に相談することをお勧めします。
切替車の摩耗・破損
ローターの回転による巻き上げの力をゼンマイに伝える中間車のことを「切替車」と呼びます。ローターのすぐ隣にある歯車で左右に回転するローターの動きを一定方向に切り替えて動力に伝える役割があります。
複雑な形状をしていながら回り続ける時間が長く、常に動き続けるローターの回転を受け止める形になるので歯車の中でも磨耗しやすい部品の一つと言えます。実際の修理でも交換になる頻度は高いです。
切替車の摩耗が進むと空回りしてしまい、ローターが回っていてもゼンマイが巻かれていかない不具合が発生してしまいます。また、経年劣化により油が固まり、重くなってしまいローターの動力が伝わらないという不具合も多く見られます。
この状態ですと自動巻きとして機能していないことになりますし、他の部品にも悪影響を与えてしまう可能性もあります。一応、手巻きにより直接ゼンマイの巻き上げを行えば時計として使用することは可能ですが、異常があるのに無理矢理動かしていることになりますのでお勧めできません。
全体的な油の経年劣化
自動巻き部分は巻き上げの際に重要な役割を担うパーツですが、その他の部分も時計を正常に動かすために連動したり噛み合ったりしています。
もちろんそれぞれの箇所にも油が注してありますので経年劣化により油が汚れたり、揮発していきます。年数が経過すればするほど劣化具合も進行していきますので止まりの原因になります。
油が切れてしまうと部品の破損にも繋がりますので、3~4年おきくらいの間隔で定期的にメンテナンスに出すようにしましょう。
まとめ
腕時計は精密機器になります。構造が非常に複雑ですのでたった一つのパーツに不具合があっただけでも止まってしまう場合があります。特に機械式時計は部品数も200個を超えますのでより繊細な機械であると言えます。
止まっているということは内部で何かしらの不具合があるということですからオーバーホールの際に部品交換が発生する可能性も高くなります。メンテナンスの費用に加えて交換する部品代も追加になってしまいます。
ユーザーの皆様ご自身でしっかりと時計を管理し、定期的にメンテナンスに出すことでそういった費用を抑えることができますし、不具合なく時計を維持し、快適に使っていく環境をコントロールすることも可能です。
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